
フロント2輪の見た目から想像する乗り味と現実の差
たとえば、ヤマハ「SR400」のエンジンを眺めていると、いかにもトコトコと進みそうですよね。逆に「YZF-R1M」のスタイルは、ほぼモトGPマシンと言ってもよく、とんでもなく速そう。こんな風に、カタチからそのバイクの走りをイメージできるものですが、「トリシティ155」のような3輪スクーターはどうでしょう? 【画像】抜群の安定感!ヤマハ「トリシティ155」を画像で見る(11枚) 果たしてクセはないのか? 重たくはないのか? そもそも何かメリットはあるのか……? などなど、ここではこの不思議なカタチの乗り物の体験記を、初期型「トリシティ125」を普段から愛用している僕(筆者:伊丹孝裕)の視点からお届けします。 操作は一般的なスクーターと同じなので、難しさはありません。キーをオンにしてブレーキレバーを握り、セルスターターのボタンを押せばエンジンが始動。あとはスロットルをひねればOKです。 車重165kgと聞くと、小柄な人はプレッシャーに感じるかもしれませんが、大丈夫。重たいパーツは車体の下部に集まっているため、引き起こしや取り回しにあまり力を必要としないからです。むしろ驚かされるのは、車重をものともしないエンジンの小気味よさで、交差点からの発進では鋭く加速。交通の流れを余裕でリードすることが可能です。 通勤や通学で使おうと思っている人にとって気になるのは、車体の大きさかもしれません。なぜならフロント2輪の“圧”はなかなかのもので、かなりワイドに見えるのも事実。渋滞路で持て余しそうな構造ながら、全幅は750mmに過ぎず、これは同クラスのスクーター「NMAX155」よりも10mm広いだけ、全長も25mm長いだけなので、乗車感覚はほぼ同等と言っていいでしょう。 では、なぜわざわざフロントを2輪にしたのか?
分かりやすい恩恵が路面に張りついたかのようなタイヤの接地感で、とくに雨の日の安定性はバツグン。マンホールのフタや横断歩道のペイントはバイクの大敵ですが、車体を傾けたまま、そこを通過してもヒヤッとするような場面はなく、段差や凸凹を拾ってもあまりフラれません。また、急ブレーキを強いられてもタイヤが1本多いぶん、制動力が向上。ABSも備えられているため、かなり短い距離で停止することができるはずです。 それでいて、車体を右へ左へとバンクさせるバイクならではの動きはそのまま残され、ハンドリングはナチュラルそのもの。タウンユースに留まらず、収納力や燃費のよさ、軽二輪に区分される排気量も活かしてツーリングに出掛けるのもいいでしょう。 そんなこんなで1週間ほどたっぷりと乗り、唯一「惜しい」と思ったのが、メーターに表示される緑色の「ECO」インジケーターです。これはスムーズに走っていると点灯し、「上手に乗っているね」とバイクが褒めてくれているわけです。 ただし、常識的なライディングをしていれば基本的に点いていることが多く、その照度がかなり明るいため、夜間はチラチラと視界に入って結構気になります。なので、逆に乱暴な操作をした時に赤色で光るようなインジケーターだと「もっと慎重に」とたしなめられているようでいいのではないでしょうか。
いずれにしても、3輪の安心感は見た目以上に大きい。新しい技術に挑戦し、安全性に貢献してくれているヤマハに拍手を贈りたいと思います。
伊丹孝裕
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June 02, 2020 at 09:04AM
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